EMUG2025で見た最新のジャーナル編集効率化事例と今後の展望
こんにちは、Editorial Manager®(以下EM)クライアントサポートの高柳です。
今回は、2025年6月に開催された「EMUG2025」から、EMの機能を活用した海外での成功事例と今後予定されているアップデートをご紹介します。
EMUG(Editorial Manager User Group Meeting)は、EMの開発元であるAries Systems社が毎年開催するユーザー会です。例年は米国ボストンで行われていますが、今年は世界中のユーザーが参加しやすいようオンラインで実施されました。本記事では、海外の編集部がどのようにEMを活用しているか、そして今後どのような機能改善が予定されているかをまとめています。
事例紹介
①Find Reviewers using Scopusを使って査読者選定の負担を解消した事例
機能の概要
Find Reviewers using Scopus(以下、Find Reviewers)は、EMとScopusのデータを連携させた査読者検索機能です。約1,960万以上の世界中の研究者データから、分野やキーワードをもとに候補者を探せるため、多様な研究者に査読を依頼しやすくなります。
詳細はこちらをご覧ください。
事例
Penn State University Press(アメリカ・ペンシルベニア州立大学出版局)では、原稿に適した査読者の選定や、複数データベースを用いた検索に時間を要することが課題でした。Find Reviewersを試験導入した結果、より幅広く適切な専門家を選定し、査読負荷を分散させることに成功しました。
効果
- 通常は検索が難しいニッチ分野の専門家も特定が可能に
- 5ジャーナルで379名の査読者を新たに追加することに成功
- 査読者データベースが拡充したことで一人あたりの査読負荷の軽減に成功
この事例は、日本でも多くのジャーナルが抱える「査読者選定の負担」という課題にも直結します。
すでに日本でも導入いただいたジャーナルさまから「課題解決につながった」との声をいただいています。年間契約のほか短期トライアルも可能ですので、ぜひご検討ください。
②Task Managerを使って通常の編集フローと並行した著者への確認を効率化した事例
機能の概要
Task Manager(以下、TM)は、編集業務の流れに必要なタスクを追加・管理できる機能です。例えば、査読中に、同時進行でCOI確認や著作権チェックを挟むことが可能になり、業務の流れを効率的に整えることができます。
詳細は、機能紹介(英語)をご参考ください。
事例
Cell Press(Elsevier出版部門)では、査読中の論文を事前公開するサービス「Cell Press Sneak Peek」を提供しています。従来は、Cell Press Sneak Peekへの掲載可否の確認案内や返信管理に1論文あたり10〜15分を要していましたが、TMを活用して自動化したことで、作業時間と負担を削減できるようになりました。
TMは、業務効率化を検討するジャーナルにとって参考になります。機能の詳細や活用事例、導入に関心を持たれた方は、ぜひご相談ください。
③CME Credit(継続医学教育単位)に関する事例
概要
American Medical Association(アメリカ医師会)は、査読付き論文を発表した著者に対して自動的に「CMEクレジット(継続医学教育単位)」を付与する新しいサービスを開始しました。医師の免許更新に必要な単位を、論文執筆の成果と結びつける仕組みです。
この仕組みによって、著者は研究や出版活動そのものが「医師として学び続ける活動の一部」として評価されるようになり、ジャーナル側にとっても著者にとっても新しい魅力となっているようです。
※CMEは米国特有の制度ですが、今後の国際的な動きとして参考になる事例といえるのではないでしょうか。
EMの今後の展望
Ariesは「著者・査読者・編集者がより効率的に作業できる未来」を目指し、EMの改善計画を進めています。
EMのワークフロー強化
ユーザがよりシンプルに効率的にEMを活用できるよう、パートナーシップ会社との連携も含めて強化しています。
- 投稿プロセスの簡素化(最適なナビゲーション)
- 投稿データの自動抽出・入力の強化
- AI機能の活用
- 原稿のHTML版に直接インラインコメントができる 等
EMのアカウント管理
アカウントをよりシームレスに管理したり、セキュリティ面の強化を検討しています。
- シングルサインオンや二段階認証の導入
- メールアドレス認証
- ORCID認証の強化
- 学術機関識別子(Research Organization Registry)認証 等
アクセシビリティ
- ヨーロッパアクセシビリティ法(EAA)やアメリカ障害者法(ADA)への対応
今後の展望についてはまだ詳細が発表されていないことが多いため、続報があればまたご紹介させていただきます。特に、アカウント管理に関しては日本のお客様からも改善要望が多く、弊社としてもリリースを大変期待しています。
さいごに
EMUG2025全体の様子は録画(英語)からご覧いただけます。
昨年までの現地開催の様子は過去ブログでも紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
今後もAriesと連携し、日本のお客様にとってより便利に活用いただけるよう努めてまいります。
どうぞご期待ください。