EMUG2026レポート:AI時代の投稿・査読システムに求められるもの

2026/09/29|ブログ

こんにちは、Editorial Manager®(以下EM)クライアントサポートの仲井眞です。今回は2026年6月に開催された「EMUG2026」から3つのトピックをご紹介します。

EMUG(Editorial Manager User Group Meeting)は、EMの開発元であるAries Systems社が毎年開催するユーザー会です。今回はAI時代を見据えたAriesの方向性から、パートナー企業との連携強化、具体的な機能改善計画まで幅広い内容が発表されました。順にご紹介します。

基調講演:データ標準化とAI

基調講演「Creating Harmony – Data Standardization」では、AI時代に学術出版・査読の仕組みがどう変化していくのか、Ariesが見据える方向性が語られました。

アクセスの36%はAIだった

近年、読者とコンテンツの間に『AI』が介在するケースが急増しています。 講演内で紹介された調査(約30の学術出版社、5,000万件のリクエストを対象)では、アクセスのうち36%がAI等のロボットによるものでした(出典:Scholarly Kitchen)。

4つのTrust Stack(信頼情報)

こうした変化の中、将来のAI活用のために注目されるのが、投稿・査読システムが持つTrust Stack(信頼情報)です。特に、次に挙げる4つの情報は今後AIがコンテンツの信頼性を判断する重要な手がかりになり得るとされています。

①著者・所属機関の身元
②開示情報や資金の出所
③研究公正チェックの結果
④査読・編集判断

AI時代のシステム活用の鍵は「データハーモナイゼーション(データ標準化)」

では、これらの「信頼情報」をうまくAIに活用させるために、ジャーナル側ではどんな準備が必要なのでしょうか?
答えは、「データハーモナイゼーション(データ標準化)」です。投稿項目・メタデータ・永続識別子(ORCID・RORなど)の運用をジャーナル横断で揃えることで、AIによる情報へのアクセスや処理の精度が高まることが期待できます。

・ジャーナルごとの独自運用が根強い日本の学会誌にとっても、データの標準化は今後避けて通れないテーマになるかもしれないと感じました。「投稿項目やメタデータの整理」は、将来のAI活用に向けての第一歩となりそうです。

Research Integrity Solutions Showcase:研究公正ツールとの連携

昨今、学術業界では、引用の不正使用や剽窃、画像の改ざんなど、様々な研究不正への対策が課題になっています。EMではパートナー企業と連携を進めており、EMUG2026では3社から連携機能のプレゼンテーションがありました。

Signals

原稿を自動でインテグリティチェックするツールです。著者情報、参考文献(自己引用やDOI妥当性の検出など)、本文内容(AI生成テキスト検出など)の3項目で、30以上の自動チェックが動作します。ImageTwinとの連携による画像チェックや、AIアシスタント「Sleuth AI」によるチェック結果の相談も可能です。

Proofig AI

画像の重複や改ざん、AI生成画像、盗用など5種類の問題を自動検出する画像専門ツールです。EM内で自動スキャン後、最終判定はエディターが行います。特に、ライフサイエンスの分野では投稿の4件に1件は画像トラブルがあると言われており、活用が期待されます。

DataSeer

AIがオープンデータポリシーへの適合状況をチェックするアシスタント機能「Snapshot」です。データ提供声明(Data Availability Statement)を読み込み、著者への修正依頼文案を自動作成します。個人情報の検出機能も備えています。

・研究公正への対応については、学会の皆さまからのお問い合わせも増えており、関心が高まっているテーマの一つだと感じています。 今後、まずは英文ジャーナルを中心に、日本での導入についても検討を進めていく予定です。

The Road Ahead:EMの今後の展望

Ariesは「著者・査読者・編集者がより効率的に作業できる未来」を目指し、EMの改善計画を進めています。

著者の負担を軽減する新しいプラットフォーム「Chronos Hub」の活用で、ジャーナルの推薦機能や、投稿フォームで登録済み情報が使い回せる機能などの実現を検討中です。

デスクリジェクトや査読の補完材料としてAI活用を検討中です。(海外の一部お客様とテスト中、本格導入前)。

投稿件数の推移や査読にかかる時間などをグラフで一目確認できる新機能を検討しています。

投稿処理を裏側で支えているいくつかのツールが、より使いやすいものに生まれ変わります。

[例]

原稿情報自動読み取りツール、PDF作成ツールの処理速度向上

参考文献の自動チェック機能(Scopus照合)

ユーザーの要望に応える改革を検討中です。

[改革案]

複数サイトを1つのアカウントでログインできる仕組み

二段階認証の導入によるセキュリティ強化

研究公正性チェックツールとの連携強化に加え、Integra「Editorial Pilot」との新規連携、Ringgold・RORとの連携強化、CCC RightsLinkとのAPC決済連携拡張などが予定されています。

米国障害者法(ADA)への対応を進めています。

・アカウント管理に関しては日本のお客様からも改善要望が多く、弊社としてもリリースを大変期待しています!今後の展望の詳細については、続報が出ましたらまたご紹介させていただきます。

さいごに

EMUG2026全体の様子はオンデマンド動画(英語)からご覧いただけます。
また、EMUGの様子は毎年ブログで紹介しています。ぜひ、過去の記事も併せてご覧ください。

EMUGの内容についてご質問やご相談がありましたらいつでもお気軽にクライアントサポートまでお問い合わせください。今後もAriesと連携し、AI活用時代にもお客様にとってより便利にご利用いただけるよう努めてまいります。どうぞご期待ください。